にべないオウジ



昼休み、透子と一緒に食べようと約束していたので遊馬くんは「グッドタイミングだね」と何がグッドなタイミングか分からないけど、にかっと笑って親指を立てた。

結局休講になった一時間、私はイメージとは真逆の桜司の姿を見続けて、なんだかもうお腹いっぱいだ。吐きそう。食べるけど。


「あれ、オウくんたちも一緒に食べるの?珍しい」

「席がなかったから仕方なくだよ」


言われてから改めて見てみると、この男は面白いほど分かりやすかった。

透子がいない時はそれなりに、まあまあ人間らしく話せていたのに、透子が来た途端表情が固まって口数が減る。

透子がどこかを見ている時は透子の姿を見惚れるように眺めて、透子がこちらを向けば、凄まじい速さで顔を背ける。


遊馬くんがコソッと耳打ちした。見てると飽きないでしょ、と。

この人絶対楽しんでるよなぁ。小学校の時から二人を見ている私としては、正直ひやひやそわそわして居たたまれないというのに。


「さっきの授業でね、何度先生に注意されても喋り続ける人がいてね、先生が急にキレちゃってね」


話をまとめて話すのが苦手な透子は、結論までいくのに時間がかかる。

桜司は頬杖をついたままどこを見ているのか、透子から目を逸らしたままだ。