そもそも私は彼が好きなのに、どうして彼氏を作ろうとしてるんだろう。彼氏って好きな人のことじゃないの?
あ、その好きな人に「彼氏でも作ってこい」って言われたんだった。納得。
「嫌だよ!透子に彼氏なんて!」
「えっ、なんでさ」
「寂しいじゃん!透子は一生私の可愛い透子でいてよ!何処の馬の骨かも分からん男と付き合うなんて絶っっ対許さないから」
「ええ、困ったなあ」
あいつ、そんなこと言うなんて頭イカれてんじゃないの!と怒りながらキリちゃんは自販機で買った紅茶を飲み干した。
そして私が持っている望遠鏡を取られる。ああっ、それで彼氏候補を選ぼうと思ってたのに!
「そもそもこんなことして彼氏が出来るわけないでしょ!」
「じゃあどうやって作ればいいの?私、オウくん以外の男の人とあんまり関わったことがないから分からない」
口を尖らせると、キリちゃんが溜め息を吐く。
「透子。私はあんたを昔からよく知ってるし、あいつのことをずーっと好きなのも知ってる。だけど言いなりになりすぎだよ。彼氏作ったとして、あいつは透子を見てくれるの?」
「それは…」
と、キリちゃんの後ろから男女の集団が通りかかるので、私はその集団をじっと見つめる。
いつもみんなの真ん中に居る人。いつも、私を見つけると、少しだけ眉を顰める人。

