にべないオウジ



次に始まるはずの講義は休講になっていたらしく、私は事前にチェックしていなかった自分を心底恨んだ。

更には桜司たちと同じ講義を選択した過去の自分も心底恨んだ。


「まま、キリちゃん。座って座って。バナナジュース飲む?」


強引に座らされて、前を向くと物凄い不機嫌面で頬杖をついている桜司。

いや巻き込まれてんのはこっちなんだよ。見たくなかったもの見ちまったんだよ。


とりあえずバナナジュースは断って、私は遊馬くんを恨めしい目で見る。何も考えてなさそうに笑いながら、彼は私の隣に座った。


「……あのー、ごめん。頭が整理できてないから何個か質問していい?」

「どうぞどうぞ。桜司様が答えてくださります」


私はこの男の高校時代を知らないけど、小中までは肩より短かった髪を随分伸ばしているようだ。

他の人がすると「早く切れよ鬱陶しい!」と思うのに、この男がするとやけに色気が倍増する。


桜司は面倒くさそうに視線だけをこちらに向け、「仕方ないから答えてやるよ」みたいな空気を醸し出しやがった。


殴りたい衝動を抑え、私は手を挙げた。