にべないオウジ




高校の時、同じ部活だった友達が今目の前で、恍惚とした瞳で宙を眺めている。

私は思いっきり目を細めて、先程購入したジャスミンティーを飲んでいた。


「それでさ?私たち理系女子からすればあんな色男は近くに存在しないわけ。もっさい男しかいないのよ。初めて見たぁ。生、工藤桜司…」

「そんなにいいもんかねえ」

「キリは小学校の時から彼を見てるから感覚が麻痺してるの!」


そりゃあ、私だって小学4年か5年の頃は一瞬あいつが好きだった時期もあるけど、あんなの周りの空気に乗せられただけだ。

中学生になればあんな男のどこがいいのかばかり考えていた。


実際、何考えてるか分からないし、偉そうだし、性格悪いし、透子に当たりきついし、ろくな男じゃない。

だけどやっぱり女は、あの男に魅了されるらしい。


「蛙も興奮したんだろうね。彼の近くまで飛んでいってさ。普通なら驚くだろうに、彼全然動じないの。あれは良い遺伝子を残すよぉ…」

「怖い。なんか言い方怖い」


あ、ジャスミンティーなくなった。ずずずとストローが歪な音を出す。