「じゃ、俺達は退散ってことで〜」
「は?ちょ、遊馬、何すんのよ!離しなさいよー!」
遊馬くんはほぼ強制的に私に予定がないと断言してここまで連れてきたし、強制的に彼女を連れてここから立ち去った。
案外強引な人なんだなぁと他人事のように思いながら、遊馬くんと女の子の背中を眺める。
背の高いオウくんを見上げて、何となく気まずい空気になる。
こんな空気、今までなったことなかったのに。
「……おでこ、大丈夫?」
「……ああ」
「痛い?」
「……痛い」
痛いのは額のはずなのに、オウくんは顔を歪めて心臓の辺りをくしゃっと掴んだ。
「付き合うのか?」
「え?あ、仁見さん?」
「名前なんて知らない」
この人は何を話したくて私を探していたんだろう。きっと聞いても答えてくれそうにないので、敢えて聞かないことにする。
小学生の時は、みんなが好きになったクラスの人気者。
中学生の時は、誰もが彼女になりたいと願った高嶺の花。
高校生の時は、きゃあきゃあ騒がれた弓道部の王子様。

