「透子、あんたさっきから何やってんの。怖い。通報されるよ」
大学のキャンパス内。
次の講義のために移動する生徒や、講義をサボってはしゃぎながら帰る生徒、恋人同士寄り添う生徒、集団で騒ぎながら何やらじゃんけんをしている生徒。
沢山の生徒が行き交う中、私は広いキャンパスの隅っこの方のベンチに腰掛け、真剣に望遠鏡を覗いている。
「しっ!今集中してるの!」
「また変なことやりだしたよ〜」
うーん。あの人は髪型が鳥みたいで変。あの人はスタイルはまぁまぁだけど「とてもねむい」って書いた変なロゴTが残念。あー、あの人は…シンプルでオシャレな格好だけどなんか話がつまらなそう。
「今度は王子様に何言われたわけ?」
「あのねー。彼氏作ってこいって!」
「はぁっ?」
小、中、同じ学校で、高校だけ離れて、また大学が同じになった幼なじみ、キリちゃんは分かりやすく盛大に顔を歪めた。
私はそんなキリちゃんににかっと笑って、もう一度望遠鏡を覗き直す。だけどダメだなぁ。全然ピンとくる人がいない。

