遊馬くんは、しばらく黙って次の言葉を考えているようだった。
思い付いたのか、思い付かなかったのか、彼は苦笑いして首を傾げる。
「それ、透子ちゃんが気付くの、残酷だよ」
残酷なのだろうか。
自分に好意がある相手に、彼氏作れとか、チョコを渡しても要らないから捨てろとか言う方よりも、私を残酷だと言うのは、彼がオウくんの友達だからなのだろうか。
「透子ちゃんは、ずっと桜司のことが好きだったけど、ちゃんと恋をしたことがなかったんだね」
オウくんへのこの感情が、何なのか知りたい。
これが恋だというなら、私はもっとちゃんと、オウくんのこと、好きになりたい。
控えめに頷くと、遊馬くんはいつものように明るく笑った。「ほんと正直だね」と言って可笑しそうに笑う。
「よし、じゃあ桜司のとこ行こっか」
「え、この流れで?私もう今日は終わりだし帰りたいんだけど…」
「何か予定でもあるの?ないでしょ?桜司がこの前からずっと透子ちゃんのこと探してるのに、中々見つからないからって疲弊してるんだよ」
オウくんが私を探してる?何か用事でもあるのだろうか。私を探してくれたことなんてなかったから、ちょっとソワソワした。

