にべないオウジ



「おかげで桜司の足は傷だらけだよ」

「足?どうして?」

「躓きまくってるからだよ!」

「オウくんが?」


想像できない。何かに躓いて足を怪我しているオウくん。スタイリッシュに躓くのだろうか。うーん、やっぱり想像できない。


「……オウくんのことは、とても大切。悲しい思いをしてほしくない。オウくんと普通に話せてる女の子が羨ましいとも思う。私の中で在って当たり前の感情。それがオウくんに対する気持ちなの。胸が痛くて、焼けそうになる」


遊馬くんは、私の次の言葉をじっと待つ。苦い顔をしながら、耐えるように待つ。


「だけど人を好きになるって、きっとそれだけじゃないんでしょう?彼に群がる女の子たちにムカついたり、私だけを見てって独占欲が湧いたり、返事が待ち遠しくて平気で何時間もぼうっとスマホ眺めたり、相手のすることに一喜一憂したり、息が出来なくなるほどドキドキしたり。くっつきたいとか、もっと相手を知りたいとか。そういう色んな欲が出てくるんでしょう?」


私ね、オウくんのことが好きだし、オウくんに認められたくて色んなこと頑張ったけど、そういう欲はないんだ。


彼に群がる女の子を羨ましいとは思うけど、どっか行ってとか、近寄らないでとは思わない。別に私は遠くから見てるだけでいい。

高校で初めてスマホを持った時、一番初めに彼に連絡先を聞いたけど「教える必要性が分からない」と言われて以来連絡先すら知らない。

彼のことをかっこいいなぁってすごく思うけど、いつも見てるだけだからそれ以上は求めない。あの人に触れることを許されるところが、想像できない。