にべないオウジ



その感情って、本当に恋なの?

その言葉が頭から離れなくて、しばらくずっとそのことを考えていた。


「……おい、」


勢いよく顔を上げる。

不機嫌そうに眉間にシワを寄せて、私を見下ろすオウくん。

タオルで汗を拭って、左手にはスマホが握りしめられている。オウくんの前髪から、きらりと一滴、汗が流れる。綺麗だなあ。


「れ、れ、れ、」

「れ?」

「連……」

「れん?」


"恋って、痛いだけじゃないよ。"


「……練習の邪魔。とっとと帰ってくんない」


それなら私のこの気持ちは、一体何だと言うのだろう。


「オウくん」

「あ?」

「恋って、何なんだろう」

「……は?」


10年以上この人の事しか考えてなかったから、それが恋なのだと疑わなかったから、ちゃんと考えたことなかった。