「透子の相手は、ちゃんとこの会社を受け継いでもいいとパパが認めた相手であることに限るからな。そんじょそこらの男が務まるものでもない」

「……何それ。いつの時代?私の好きな人くらい、私で決めるよ」

「そうだ透子。そんなに恋愛がしたいならいい物件がある。お得意先のご子息様でな、まぁまぁ良い男なんだ。今度食事の機会を設けてやろう」

「い、いらない!絶対行かないから!」


全力で首を振ると、父は怪訝な顔をして「やっぱり彼氏が出来たのか…?」と探るようにこちらを見るので、もっと全力で首を振った。


「いいじゃない、透子ちゃん。あなたまだ男の子とお付き合いしたことないでしょう?食事くらい構えることないわよ。ねえ?パパ」

「ちょっと、行かないってば!」

「そうだぞ。恋愛は人を成長させてくれるからなぁ。まぁ相手が誰であれパパは許さんが、透子ちゃんのために、食事に行くくらいは目を瞑ってやろう…」

「だから行かないよ!?聞いてる!?」


日にちはいつにする?早い方がいいな。写真ないの?今度貰ってくる。イケメンだといいわねぇ。透子の子供を産むかもしれないからな、いい遺伝子に越したことはない。楽しみね〜。

と、勝手に話が先へ先へと進んでいく呑気な両親に、私はバンッとテーブルに手をついた。

痛い。強く叩きすぎた。


「だから、行かないって言ってるじゃん!そんなに言うなら…もう家に帰らないから!」

「って言ってもキリちゃんの家くらいしか行くとこないくせに。可愛いなぁ、透子ちゃんは」


バカにしているわけではないんだろうけど、結果的にバカにしたように笑う父は微笑ましく私を見た。まるで幼稚園児の私を見る目と変わらない眼差しに、むっとする。

覚えてろー!と捨て台詞を吐いて家を出ると、家の中で二人がまた呑気に微笑ましく笑い合った。