透子は、純粋で、可愛くて、一途で、けがれなんてなくて、綺麗だから、あんなふうにみんなに愛されて、可愛がられて、桜司からも一途に愛してもらえるのかな。

私は、綺麗じゃないから、いつもどんな恋愛しても上手くいかないのかな。それなのに常に誰かを好きでいないと不安で、虚しくて、たまらなくなる。汚い。醜い。


私、中学の時の劇では魔法使い役だったんだよ。

結構大役で、なんかボケさせられて、割とセリフも多くて、重要な役だったんだよ。

だけど魔法使いは魔法をかけてあげるばかりで、その本人には、誰も魔法をかけてくれないよね。


「キリちゃん、また先生に泣かされたの?」

「、」


最近、卒論の相談で頻繁にあの研究室に出入りしている彼が、前に進もうとする私を止めて、そっと声をかけた。

"まだまだ現役"そんな意味の分からないTシャツを着て。


「……仁見さんには、関係ないです」

「じゃあ、そんなふうに泣かないでよ」

「……」

「そんなふうに、助けてって言ってるみたいに、泣かないでよ」


仁見さんのくせに。ヘタレなくせに。恋愛経験も大してないくせに。私の方が絶対経験豊富だ。だって私を抱きしめるこの人の体、震えてる。


「うっ、うう、うあああああ」


もう成人した大人が、いい歳して、声を荒らげて泣き叫ぶ。大人って何歳からそう呼ぶんだろう。何歳から、人は子供みたい泣けなくなるんだろう。

希ならきっと、適当なこと言って答えてくれる。だけど今ここに希は居なくて、死にたくなるほど、胸が悲鳴を上げた。