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「あ、工藤桜司と、久瀬透子」
研究室の窓から外を見下ろして、興味無さそうに呟く。だけどこの人が直接関わりもない生徒の顔と名前を覚えているなんて珍しくて、ふかふかのソファに座りながらその様子をじっと見つめていた。
「すごいよね、彼ら。教職員にまで噂が回ってるんだから。キリの幼なじみだっけ?」
「うん。そう」
「へー。感心するなぁ」
なんて、大して感心なんてしてないくせに。希はそう呟いてから、足を引きずりながらずるずるとこちらへやって来る。
私の隣にどかっと座って、また難しい本を読み始めた。最近は論文を書くのに忙しいそうだ。だけどこうやってたまに呼んでくれるから、忙しいのか暇なのか分からない。
透子たちは、中学の時劇でシンデレラをやった時以上にドラマチックに結ばれて、あの時以上に歓声も拍手も凄かった。
あんなの、この先の人生で二度と見られないシーンだと思う。
透子と桜司だからこそ成立するあの空間に、私は泣きそうになるほど嬉しかったし、泣きそうになるほど虚しかった。
私はいつまでこんなことをしてるんだろうって、虚しくなって、だけど無性に希に会いたくて、だけど連絡が来なくて、そのジレンマに叫びたくなった。
「俺だったらあんな人前で告白なんて死んでも出来ないな」
「桜司も、そんなことするタイプじゃないよ。だけど、溢れ出たんじゃないかなぁ。感情が、溢れて、周りとか見えなくなって、どうでもよくなったんだよ」
私はそんなふうになるまで誰かに好きになって貰えるのかなぁ。考えて、虚しくて、やめた。

