にべないオウジ



遊馬くんも同じようにイスに腰掛ける。

小さく笑う彼は、どこか悲しそう。


「すごいね。透子ちゃん。ほんとにずっと桜司一筋だ」

「……いや、別にすごくは…」

「立派だよ。きっと王子様は、その一瞬のお姫様より、ずーっと傍で見守ってくれてた木の方が必要としてるんじゃない?」


そう、かな。そうだといいんだけど。だってあれからオウくんとは詳しく話せてないし、今日まで"返事"を言わせてくれたこともない。

もしかしてあっちが忘れてるんじゃない?私に忘れろってめちゃくちゃなこと言っといて自分が忘れてたら、もう救いようないよ?オウくんどうでもいいことは忘れっぽいからなぁ。

どうでもいいことじゃ、なきゃいいんだけど。



私以外に触りたくないって言ったのに。

私にしかキスしたくないって。私しか視界に入らないって。私以外クソどうでもいいって言ったのに。

世界がオウくんと私の二人きりになっても構わないって思うくらい、惚れてるんだって。そんな素敵すぎる言葉を、超絶ぶっきらぼうに言ってくれたのに。


一言一句覚えてるんだから。絶対忘れてあげない。もしもオウくんが忘れてたりしたら、オウくんの嫌いなパクチー口の中に大量に詰め込んでやる。


「あ、シロップ取ってくるの忘れた。ごめん、先食べてて!」

「ん、待ってるからゆっくり行ってきなー」


イスから立ち上がって、さっき行った売店に向かって小走りになる。だけど靴擦れをしていることを忘れて、痛みに耐えきれず転びそうになった。