「あ!あと桜司と付き合ったら報告してよね」

「えっ、うあ、それは…」

「あんたらまだくっついてないのー?ある意味奇跡だね。もはや理解不能だけど」


私だって理解不能だよ。あのオウくんとあんなふうに喧嘩したのも初めてだし、言い合いの末、吐き捨てるように気持ちを伝えられた。

あんな乱暴な告白ある?しかも一旦忘れてって言われた。オウくんらしいけどさ。忘れられるわけないじゃん。

何度も何度も思い出して、何度も何度もオウくんのこと考えたよ。


「安心しなよ。桜司の初恋は透子だからさ」

「えっ嘘だ」

「ふは、即答で否定って。桜司の日ごろの行いだなー」


その言葉に顔が熱くなる。ぼうっとしていると引越し業者の邪魔になってしまって、慌てて退いた。

あの日は感情的になりすぎた。お姉ちゃんにもオウくんにも本当に申し訳ないことをした。だけどあの日がなかったら、私達はどうなってたかな。

また、すれ違うばかりで、ずっと交わることはなかったかもしれない。


最後の荷物をトラックに運んでいく。

母はその様子を少し口を尖らせながら見ていて、これ以上口うるさく何かを言うことはしないらしい。素直に寂しいって言えばいいのに。それは言えないんだね。


「んじゃ、行ってきます」

「……行ってらっしゃい」


隣を見ると母が号泣していて、笑ってしまったから涙は出なかった。もう、何この家族。変なの。