透子の家を離れて、とぼとぼ帰る道中、声を上げて笑っている男に、俺は盛大に顔が歪む。
「ふっ、あは、あははは!やばいよ桜司。面白すぎる。大傑作だ。くっ、あはは!あんなバカバカ言い合う告白ってある?あーっ、最高。いいもん見せてもらったわぁ」
遊馬だ。
なんでここに居るんだとか、なんで全部を知ったような顔をしているんだとか、色々聞きたいことはあるけど、俺は黙って遊馬を睨みつける。
「長年こじらせてきて、ついに結ばれるのかなーって思ってたらあれだもんなぁ。ふっ、ふはは、何回思い出しても笑える。やっぱ桜司は最高だよ」
「……お前、何企んでる?」
「何って?」
何も企んでないよ。と、遊馬はいつものようににっこり明るく笑った。底なしの笑顔というわけではなくて、含みのある笑顔に、俺はいつも何かが引っかかる。
大学に入学して、一番初めに話しかけてきたのがこいつだった。俺と一緒に居ると自分も目立てるから、傍に置けと、意味不明なことを言われた覚えがある。
空気を読むのが上手いし、イライラしてる時は話しかけてこないし、不快ではないため俺はこいつの隣が少しだけ居心地が良かった。
「俺、透子ちゃんにキスしちゃった」
「……は?」
「ごめんね。初めは桜司を応援しようと思ってたんだけどさ。俺、人のものって取りたくなるんだよねぇ」
「お、前…」
「だってさ、ずるいよ、桜司ばっかり。素っ気なくて自分勝手なくせに、無条件に人から愛されて、透子ちゃんから好きでいてもらえて、ずるいよ」
こいつは、いつだって愛に飢えている。
相手の立場に立って物事を考えることが出来るし、相手がどんな言葉を欲しているのか冷静に考えることが出来るくらい器用なのに、不器用だ。

