にべないオウジ



「……離して」

「嫌だ」

「離して!」

「離さない!」

「だっ、て、私は初めて男の子の名前を覚えたのも、みんなに向けて笑う顔に憧れたのも、運動場で誰よりも速く走る姿がかっこいいって思ったのも、誰かに喜んでもらえることがこんなに嬉しいことも、その人を大切にしたいって思う心も、悲しい思いをしてほしくないって願うことも、その人に触れたくて、触れられたら胸が苦しくなって、だけどその人のことしか考えられなくて、そういう感情を抱くのは、全部全部オウくんが初めてなの!」

「……透子、」

「だけどオウくんはそうじゃない。私以外の人に恋をして、私以外の人に沢山触って、オウくんがそうしてる間、私は家で何してたんだろうって思ったら、悲しくて、虚しくて、たまらなくなる!」

「透子!」

「もう嫌だ。疲れた。私の感情、全部オウくんでできてるから、それ以外の感情が分からないの」

「透子、待って」

「もう疲れたよ」

「……」

「ほら、こんなこと言いたくなかったのに。お願い、離して。今はオウくんの顔見たくない」

「嫌だっつってんだろ、バカ!!」

「バ、バカ!?そんなの、オウくんに一番言われたくない!大体こんなことになったのは全部オウくんのせいじゃん!私のこと好きにならないんだったら、キスなんかしないでよ。期待させることしないでよ!バカ!!」

「するに決まってんだろ!」

「はあ!?なんで!?」

「お前以外に触りたくないし、お前にしかキスしたくないし、お前しか視界に入らないし、お前以外クソどうでもいいし、世界が俺と透子二人きりになっても構わないって思うくらい、お前に惚れてるからだろ!!!」