だってオウくんにバレたらめちゃくちゃ嫌な顔されるんだもーん。と、誰も聞いちゃいないのに言い訳をする。
「久瀬さん」
私の名前を呼ぶ声が上から降ってきたので、ふと顔を上げた。
目が合うと、彼は少し照れたようにはにかむ。今日は「完熟トマトのハヤシライス」と書いたTシャツだ。一体どこで売ってるんだろう。
またオウくんを勧誘しに来たのかと眉を寄せると、違う違うと彼は笑って首を振った。
「たまたまコソコソストーカーみたいな怖いことしてる久瀬さんを見つけたから。何してるのかなぁと思って」
「仁見さんって結構失礼ですよね」
私たち女子の目線の先。辿れば彼は納得したように「ああ」と頷いた。
「彼女たち、工藤くんのところ行っちゃったけど、久瀬さんはいいの?なんとも思わないの?」
特にセットされていない髪に、ちょっとズレたメガネ、変なTシャツに、濃い色のジーパン。それがこの人の制服なのだと言わんばかりの格好だ。
「羨ましいなあと思います。すごく」
女の子たちがオウくんの傍に駆け寄って、何かを話している姿が見える。オウくんは楽しそうに話すわけでもなく、鬱陶しそうに顔を歪めるわけでもなく、彼女たちの話を聞いている。

