「ひどいね。今度は桜司に何言われたの?」
「言いたくない」
「はぁ。俺たち友達なのに?ひどいなぁ。俺、友達が泣いてると思って必死で走ってきたのにさ?教えてくれないんだ。透子ちゃんは俺を他人だと思ってるんだね。はぁ、傷付くなぁ」
「え、ごめっ、そんなつもりじゃ」
というか、私の事友達って思ってくれてたんだ。嬉しくて思わず顔を上げると、遊馬くんは満足げに笑っていた。はめられた。そう分かっているけど、せっかく私のために来てくれたのに話さないのも失礼だと思って、ぽつりぽつりと話を始める。
私は話をまとめるのが下手だ。無駄に長くなる。だから先生にはいつも結論から話せって注意されていたし、痺れを切らす友達も多かった。
だけど遊馬くんはずっと黙って聞いてくれて、最後、やっと結論を言うまで口出しせず頷いてくれた。
「そう。辛かったね」
普段はおちゃらけてて適当そうな人なのに、私を真剣に見つめて、優しい声色で言葉をかけてくれる。
そうなの。辛かったの。共感してくれるだけで、良かったの。
「人生でそんな誰かに怒ったことなかったんでしょ。それで感情がぐちゃぐちゃになっちゃったんだね。誰にでもあるよ、そういうこと。自分のことあんま責めない方がいい」
「……うん。ありが、とう」
「桜司もお姉さんもさ、透子ちゃんのこと傷付けようとしたわけじゃないと思うよ。だからもうこれ以上落ち込むことない。あんまり考えすぎるとしんどくなっちゃうでしょ」
「……うん」
洗脳されるみたいに、遊馬くんの言葉がゆっくりと脳に染み渡っていく。
やっぱりこの人優しいんだ。根は優しくて、普段はそれを隠しているみたいに見える。
だけどさ、と付け加える遊馬くんの瞳がゆらりと揺れて、私はその目を一度見ると石になるように固まってしまった。

