にべないオウジ



私がこんなふうになるなんて人生の中で初めてだから、二人とも驚いて中々言葉が出ないのだろう。

涙を拭っても拭っても溢れ出てくる。悔しい。ムカつく。だけど本当はこんなこと言いたかったんじゃなかったのに。

今日はちゃんとオウくんの気持ち聞いて、アイスを一緒に食べて、それだけで良かったのに。


「……とこ、ちょっと落ち着け」

「落ち着けるわけない!オウくんの初恋も、初めても、もう戻ってこないもん!!」

「なんだ、そんなことかよ。それなら俺はとっくにお前が…」

「そんなことって、なに?」


オウくんにとっては"そんなこと"なのかもしれないけど、私にとってはそうじゃない。

もう今更泣いたって喚いたってどうにもならないことくらい分かってるよ。

分かってるけど悲しいから涙が出るし、悔しいから怒っちゃうんだよ。理解はしてもらえなくても、名前を呼んで宥めてくれたらそれで良かったのに。


オウくんにとっては、そんなことなんだ。


「……もういい。頭冷やしてくる」

「おい、透子!どこ行くんだよ。戻れ!」

「人の心をなんだと思ってるの?人が傷付いた時の慰め方も知らないんだね。…もうオウくんの命令なんて、聞きたくない!」


涙で視界が霞む中、私を見るオウくんの表情が、ひどく傷付いているような気がした。ああ、私も同じように彼を傷付けているんだ。

こんな、お互いを傷付け合って、そんな関係良くないよね。どこで間違えたんだろう。何年も背中を見て歩いてきたけど、どこがいけなかったんだろう。


追いつかれないように、このまま逃げ切れるように、全力で走る。

だけど追いかけてくれるわけもなくて、しばらく走った後、小走りになって、歩き始めて、その場に蹲った。