にべないオウジ



もう真っ黒になった醜い心をいつも通りに戻すのは不可能で、人生で初めて味わう絶望感に、私は自分の感情をコントロール出来なくなった。

体が震える。辛い。痛い。こんなことなら、もっと前にオウくんのこときっぱり諦めたら良かった。

アイスが溶けていく。もう元の形には戻らない。それがまるで私たちのようで、ひどく、虚しい。


「オウくんに、触らないで!!!」


気付けばとっくに涙が溢れ出ていて、オウくんとお姉ちゃんが驚いたように私を見ているのも確認出来ないくらい余裕がなかった。


「何、今の話。ずっと私に黙ってたの?ずっとこれからも隠すつもりだったの?…楽しかった?私が何も知らずにバカみたいにオウくんの後ろついてるの見て、面白がってた!?」

「……透子、あんた今の話聞いて…」

「なんでいっつも私ばっかり我慢しなきゃいけないの?家の事もそう。ママが私に過保護になったのは、お姉ちゃんが我儘言って家を空けてばっかだったからじゃん!好きなように生きて、好きなように人の事振り回して、そんなに楽しい?お姉ちゃんなんか嫌い…大っ嫌い!」


ずっと、お姉ちゃんみたいになりたかった。お姉ちゃんになりたかった。なんでもできて、友達が多いこの人になれたら、きっと世界が変わって見えるんだろうなって思った。


そう強く思うようになったのは、確かオウくんがお姉ちゃんと仲良くし始めた頃だ。

それから私はお姉ちゃんの服をよく借りるようになったし、ちょっとでも近付けたら、オウくんに見てもらえるかなって。そんな、バカなこと考えてたんだ。


そんなこと、有り得ないのに。私がいくらお姉ちゃんを真似たって、お姉ちゃんにはなれないのに。

オウくんの初恋にも、初めての相手にも、もう二度となれないのに。


「取らないでよ…オウくんまで、取らないでよ…!!」


なんでも持ってるくせに、これ以上何を求めるっていうの?