どうにか授業を終えて、やっとこの吐きそうなくらいのドキドキから解放される!と思ったのに、彼に呼び止められた。
さっき、先生には課題のレポートを出されたばかり。
「お前次空きコマだろ?一緒にレポートしよ」
なんで、私が空きコマとか、オウくんにとってはどうでもいいはずのことを知ってるの?
「なんだよ、その顔」
「……ううん。そうやって誘ってくれたの、初めてだなと思って」
「間抜け面」
そんなふうに誘ってくれたことも、みんなみたいに普通に話してくれるのも、ほんとに僅かだけど、口元を緩めてくれることもなかったじゃない。
オウくんは立ち上がってトートバッグを持ち、教室を出るため足を進めた。その背中をぼうっと眺めてしまう。
オウくんが歩くと、みんな目で追う。わあ、工藤桜司だ、って火照った息を漏らしながら。
そんなみんなに振り向かれる彼は、後ろ振り返って、私を見て「とこ、早く」と、名前を呼んだ。
パソコン室を借りるため、私の分も予約してくれている。なんの風の吹き回し?分からない。けど、その優しい風がいつまでも吹いていてくれたらいいのにと思う。
普通にこの時間も授業は行われているので、パソコン室の一室は誰も使っていなくて、私たちの貸切だ。
「オウくん、真面目にレポートとかやるんだ。誰かにコピペさせてもらってるのかと思ってた」
「あー、いつもはそうだな」
隣の席に座りあって、お互い電源ボタンを押す。

