…集中出来ない。全然集中出来ない。
いつもなら一人でぼうっと先生の話を聞いて、ルーズリーフにまとめて、配布資料を受け取って、それだけで授業が終わるのに、今日は隣にオウくんがいる。
シャーペンをくるくる回す動作、眠そうにあくびをかみ殺す横顔、退屈そうに頬杖をついて指をとんとんする仕草。
全てに意識してしまって、全く授業内容が頭に入ってこないのだ。
邪念を振り払うように、ルーズリーフに向き合って、だけど集中は出来なくて、うさぎのイラストをひたすら描いていた。
「……そのブサイクなうさぎ、昔っから書いてるよな」
コソッと、彼が耳元で呟く。一応授業中という遠慮はあるのか、距離が近くて小声なのが逆効果で、イスから転げ落ちなかっただけ褒めてほしい。
オウくんは、ルーズリーフに描かれた『起きろー!』と吹き出しで叫んでいるうさぎを、大切そうに人差し指で撫でた。
「ブ、ブサイクじゃないよ。失礼だなぁ」
「ふーん。俺のとこにも書いてよ」
なんて、ルーズリーフすら広げてないくせに。
配布された資料を強引に渡されて、思わず受け取ってしまう。先生の言葉が全然頭に入らない。恐る恐るその余白にシャーペンを滑らせ、オウくんはそんな私を頬杖つきながらじっと見つめた。
震える。いつもは簡単に描けるはずなのに、緊張して上手く描けない。吹き出しに『真面目に授業受けて』と書いてちょっと怒ったうさぎにすると、それを見たオウくんは少しだけ眉を下げた。
「ふ、かわい」
先生、ごめんなさい。今日授業で話したことは、どうかテストには出さないでください。

