「桜司、大丈夫?」
軽く放心状態の桜司は、傍から見れば憂いが増していつも以上に色気がある。誰も話しかけられないような、そんな神々しい雰囲気を持つ。
だけど中身は、単に自分はもう付き合っていると思い込んでいた一人の女の子にバッサリ否定され、まるで失恋したように落胆しているただの男。
憂いの王子様は何もない道端で、躓いた。
「キスしたら、もう付き合ってるんじゃないのか」
「いやー、付き合ってなくてもする人は五万といるからね?」
「あの時、もっと強く痕を残しとけば良かった?」
「うーん。なんか想像出来るけどそういうことじゃないと思うなぁ」
「一生消えないような、痕を残せば、それを見るたび俺の事思い出す?そんでどっか閉じこめてずっと過ごしたら、俺の気持ち伝わるかな」
あー、この男ヤバいなー。そう思うけど、まぁそういう気持ちは分からなくもないので「どうだろうね」と曖昧に返す。
だけどさ、伝わらないよ、桜司。そんなことしても伝わらない。残るのは虚無感だけだ。ちゃんとあの子と面と向かって向き合わないといけないんだよ。
お前には難しいだろうね。いつも誰とも向き合わなくても向こうから寄ってきてくれただろうし、引き止め方を知らない。
向き合い方も知らないお前に、ずっと無条件でそばに居てくれるほど透子ちゃんは甘い女じゃないよ。いずれ気付いて、どこかに行ってしまう。

