にべないオウジ



てん、てん、てん…。

俺を含む計三人がその場で青ざめ、キリちゃんは「仕方のないことだ」と気まずそうに目を逸らした。


「オウくんが私なんかを彼女にしてくれるわけないもん」


ね?と、残酷なまでにかわいらしい笑顔で、桜司に首を傾ける。桜司はそのまま五秒くらい動かなかった。動けなかったのだろう。

おいおい。こじれまくった紐は綺麗に解かれたんじゃなかったのか?だからお前はあんな機嫌良くしてたんじゃなかったのか?

キリちゃんが呆れたように首を振った。それで俺は全てを察知してしまう。


「……は、当たり前だろ。鈍臭いお前はこのまま一生誰とも付き合えず死ぬんだと思うと可哀想で泣けてくるから、ボランティアだったら付き合ってやってもいいかなって話だよ。けどやっぱお金貰わなきゃやってらんないね」


言いながら、桜司のガラスの心臓がバリバリ割れて抉れていく音がした。表情でこそ何も思ってないように見えるけど、きっとこいつの心の中は大洪水だ。

透子ちゃんは少しだけ顔を歪めて「そうだよね」と返して、お弁当を食べ始める。


やっと好きな女と付き合えたと思っていたら、なんのすれ違いなのか、この有様。本人はまた思ってもないことを口に出してしまい、食欲がないのだろう、さっきとは違う意味でぼうっと宙を眺めている。

不憫すぎる。可哀想だけど、お前がちゃんとした言葉を透子ちゃんにあげないからだよ。


ふうん。まだ付き合ってないんだ。バナナチョコジュースの甘ったるい味が、口の中に広がった。