にべないオウジ



***


俺はこの男が、ちょっと、いや割と、いや結構、いやまじで、かなり、怖い。


そこに何があるんだと言うほどにどこか宙を見つめて、憂いの溜め息を吐くその姿はひどく色っぽく、男の俺でも目を奪われる。

周りに群がる女たちなんて、目をハートにしながら「桜司ぃ」と媚薬を飲んだような声を出す。

だけどこいつはそんな周りの女なんてどうでもよくて、全く相手にしていない。見えてないんじゃないかとすら思う。


まるで側近に求愛されるけど無視し続けるお殿様みたい。って、見たことないんだけどさ。


「……桜司、えらいご機嫌だね」


絶対、透子ちゃん関係だ。それ以外で桜司がここまで機嫌良さそうに過ごしているなんて有り得ない。今まで見たこともないくらい機嫌がいいので、俺は心底怖い。


花火をした時、最後の方二人だけ居なかったし、きっとその時に何かあったのだろう。

桜司がおかしくなったのは、その後からだ。


「透子がかわいすぎる…。死ねる。なんだよあいつ。やばすぎんだろ。一生愛せる。はあ、会いたい…」

「……付き合えたの?」

「まぁ、もうそれも同然だな」


意外だ。あの桜司がこんな素直に認めるなんて。やっぱり怖い。桜司のその言葉に女たちは「ええ、誰ぇ!?」と声を荒らげるけど、それでも機嫌は悪くならない。

へえ、やっと付き合ったんだ。素直に喜べない自分に、反吐が出た。