「すごいね。透子の肌、白くて柔らかいから、すぐ痕が残るんだ」
無理矢理日傘を奪われた。突然入ってくる太陽の光に目を細めている間に、工藤弟が一歩距離を詰め寄ってくる。
暑いのに、冷や汗をかく。逃げ出したいのに、この顔がオウくんに似ているからか、上手く体が動かない。
「ムカつくんだよね。俺、大嫌いなの、兄貴のこと。自分はとっとと弓辞めてさ、全部俺になすり付け。家で居心地悪いはずなのに出ていかないし。弓が出来ないあいつに、なんの価値もないのに」
「なんで、そんなこと言うの…」
傷付けないでよ、兄弟同士で。自分にそっくりなお兄ちゃんのこと、そんなふうに言わないでよ。オウくんは口が悪いしぶっきらぼうだけど、弟のことそんなふうに言ったことないよ。
一歩ずつ後退して、恐怖に顔を歪める。嫌だ。オウくんに似てるけど、全然違う。だって、この人はオウくんじゃない。
とん、と太陽に照りつけられて熱を持ったアスファルトの塀が、背中につく。熱い。肌がじりじりする。
「人んちの近所で、何やってるわけ」
咄嗟に、声のする方を見た。現れた彼は無表情で工藤弟から日傘を奪い、そっと私に影を作ってくれる。
「は、何って。まだ何もしてないけど?」
今日もシンプルな白Tシャツに、紺のスラックス。左耳のピアスがきらりと光る。あ、ピアスの穴、もう一個開けたんだ。そんなことを思いながら、唇を噛み締めて、ドキドキする胸を抑える。

