にべないオウジ



それから数日経って、そろそろ大学が始まる頃。

鏡を見て自分の姿を映す。この前までひどく痛々しかった噛み跡が薄くなっていて、二の腕の方はもう分からないくらいになった。

首の詰まったTシャツを着れば首元の方も問題ない。

案外、呆気なく消えちゃうんだなぁ。と、ぼうっと間抜けな顔をする自分の姿を眺めながら、思う。


あの時間は、何度思い返しても恥ずかしさに身が悶えるし、嬉しくて、ドキドキして、たまらない気持ちになる。

何度も思い出してベッドの上で足をバタバタさせちゃうし、ご飯を食べながら無意識にオウくんのことを考えてぽうっとして、母に心配される。


あの日から、オウくんとは一度も会っていない。連絡も来ない。まぁ、来るはずもないんだけど。

オウくんも、こんなふうに私のこと考えてくれてるかな?会いたいなって思ったらテレビの会話なんて全く耳に入らなくなって、食欲も少し減って、切ない気持ちになる。

月を見たらオウくんも見てるかなって思う。そんなふうに思ってるのは、きっと私だけだね。




「……あ、透子」


母にお使いを頼まれたので、買い物リストとエコバッグを手に、日傘を差してスーパーまで歩いていた途中。

高校の夏休みは大学よりも終わるのが早い。制服を着た工藤弟が私を見つけ、ちょっとだけ目を見開けた。