そう話すと、キリちゃんは驚いたように目を丸くして、それから昔から変わらない、眉を下げて安心したように笑った。
「そっか、良かったね、透子。じゃあ晴れて桜司と付き合えたんだ」
「え?それはないよ」
「は?」
「だって、そういう話は何もしてないし…」
「え、うん?待って?透子と桜司はどこまでいったのかな?」
「そっそれは…」
無意味に時計を見て、クローゼットの前に掛かっている昨日履いていたベージュのワイドパンツを見て、キリちゃんを見てから、二の腕の噛み跡を見る。
ちゅー…と控えめに答えると、キリちゃんは「へ?」と素っ頓狂な声を出した。
「なんだ、てっきり抵抗する透子を無理矢理抱き潰したのかと…」
「え?なんて?」
「ううん!こっちの話」
へらりと笑って首を振るので、私は話を続けた。
「頭がごちゃごちゃになったからね、知恵袋で同じような質問調べてみたの」
「え、待って?そういう系の回答ってろくでもなくない?」
「大学生は、わんちゃん?とか、わんないと?とか普通なんだって。特にサークル入ってる人は、そういうこと普通にあるんだって。キスはするけど付き合うとかの話は出ないっていう質問の回答はね、"ただの都合のいい女です。早く相手から離れましょう"だった。私、オウくんの都合のいい女なのかな」
「うわぁ…あいつも不憫だなぁ…」
早く相手から離れましょう、って。離れたくないんだけどなぁ。

