キリちゃんは「ついにやりやがった…!」と憎しみを帯びた目で呟いて、そのまま自分のスマホを取り出す。

しばらく部屋が静かになって、コール音が途絶えたのだろうか。彼女は舌打ちして「切られた!」と怒りの表情を見せた。

「電話貸して!」と手を差し出されるので、私は慌ててベッドの上に放り投げていたスマホを取って、差し出した。


慣れた手つきで操作して、スマホを耳にあてるキリちゃんの顔は、正直鬼みたいだ。


「……あっ桜司、お前私の電話だったら出ないくせに、なんで透子なら出るのよ表出ろやゴルァ!…はあ?今透子の家なのよ!あんたねぇ、痛々しい透子見て興奮しっ……あ、切りやがった!なんなのあいつ!?」


って、私に怒られても!


「大丈夫?痛いんじゃない?めっちゃ痛々しいんだけど…」

「うーん、見た目より痛くないけど、ママとかに隠す方が大変かな…」

「透子ママにバレたら桜司の命ないね。あーあ、あいつやっぱりヤバいよ」

「……でも、キリちゃん。私オウくんのこと、好きなの」


キリちゃんが来ると分かっていたので、あらかじめお菓子とアイスティーを用意しておいた。アイスティーをグラスに注いで、彼女の前に出す。

きょとんと目が合って、キリちゃんが首を傾げる。「前から好きだったじゃん」と。

うん、そうなんだけど。前とは違うの。前よりも、もっと欲張りになったし、オウくんが欲しくなったし、他の女の子と話してるともやもやするの。