「透子ー?何があったの、家から出られない状況…って……」
翌日、たまたまキリちゃんと買い物に行く約束をしていて、ほんとだったら普通に着替えて家を出て外で待ち合わせをするつもりだったんだけど、如何せん家から出られる状況ではなくて、それを伝えるとキリちゃんは家まで来てくれた。
「ぎゃあ!!何その悲惨な状況。犬にでも噛まれた!?」
首に三箇所、右腕の二の腕に二箇所。
赤い噛み跡と、赤青い鬱血痕。
へらりと笑うと、キリちゃんは血相を変えて私の座るところまで走ってきた。
「誰にやられたの!?殺す、今すぐそいつ、殺してやる!」
「お、落ち着いて、キリちゃん。違うの、これは、オウくんが…」
「は?桜司?」
昨日、結局あの後、何分も唇を塞がれ続け、離れたかと思えばまだ足りないと言って塞がれ、その繰り返しだった。
今まで自由に呼吸が出来ていたものが、オウくんに支配される。息を吸うのも、吐くのも、彼の思うまま。
挙句に「ノースリーブとかまじでむり」と舌打ちをして、二の腕に噛み付き、ぎりりと歯を立てられた。
「どういうこと、透子」
「ど、どういうことなんだろう?」
曖昧に笑うとキリちゃんは「あいつ殺す」と、どちらにせよ眉間のシワを深く刻み込んだ。