にべないオウジ



遊馬くんたちの元へ歩いていくオウくんの背中を、ぽうっと眺める。ただの黒いTシャツのはずなのに、かっこいいなぁ。


「へー、桜司にとこって呼ばれてるの?」

「……え」

「可愛いね。私達もとこちゃんって呼んでいい?」


他の男の子達に向けるオウくんの横顔が、ちょっとだけ笑ってる。花火を向けられて本気で「やめろ」って言ってる。

花火のおかげなのか、何なのか分からないけど、いつも以上に彼がキラキラして見えた。


「だ、だめ」


ぎゅーって、胸が痛いよ。


「ごめん、なさい。それだけは、だめなの」


とこって呼んでくれるのは、オウくんだけじゃなきゃ嫌なの。

あんまり呼んでくれないけど、たまーにしか呼んでくれないけど、それでもオウくんだけがいいの。


誰とも付き合うなって言ったけど、私が「誰とも付き合わないで」って言ったら、オウくんは聞いてくれる?

嫌なの。そうやって他の女の子にも火を灯してあげるところも、私以外の子と話すのも、その捲られた袖から伸びる腕の血管を誰かに見せるのも。

嫌なの。むかむかするの。触らないで。楽しそうに話さないで。こんな感情、醜くて、良くない。

分かってるのに、とっくに私はこの感情を覚えてしまった。私、あの子達に嫉妬してる…。