透子は笑うと、目尻が下がって、えくぼができて、子供みたいになる。小学生の頃から変わらない笑い方に、俺はいつも見とれてしまう。
「オウくんのつむじ、押してみたいなってずっと思ってたの」
しゃがみ込んだまま見上げると、透子は満足気に笑っていた。その瞳に、俺が映る。ああ、俺がいる。
「機嫌、直った?」
「え?別に機嫌悪くないよ。あ、避けてたから?それは…ごめんなさい。私もちょっと頭の中でごちゃごちゃして、オウくんの顔見れなかったの」
「……そう」
立ち上がって、透子を見下ろす。いつものように。だけどいつもとは、少しだけ違う。
いつもより、俺達は、少しだけ距離が近い。
何年も一緒にいるのに、初めて、ちょっと手を伸ばせばすぐ捕まえられる距離にいる。
「理由、聞かないの?」
不安げに訊ねてくるから、首を振る。
「いいよ。お前が俺の事、見てくれたから」
そう言うと透子は顔を染めて、嬉しそうに、恥ずかしそうに、唇をきゅっとしめてはにかんだ。俺の言葉一つで嬉しそうにする透子が可愛くて可愛くて、仕方がなかった。
俺、もっとこいつのことを大切にしよう。
喜ぶ顔が見たい。もっと、笑ってほしい。お前は俺の悲しみを全部ちょうだいって言ったけど、それなら透子の悲しみも全部ちょうだい。
そしたら分けっこだ。あのアイスみたいに、二人で半分ずつ。色んなものを分けていきたい。

