にべないオウジ



小学一年生の頃から同じクラスで、二十歳まであいつはずっと俺の後ろをついてきた。

それが当たり前だと思っていた。立ち止まることも振り返ることもしなかったけど、それでもあいつはふわふわ笑いながら俺についてくるんだって。


振り返って、あいつがいるところに戻ったことなんてなかった。走ったことなんて、今まで一度だってなかった。


エレベーターが中々来ないので、階段で3階まで上がる。授業は早めに終わったのか、学生がぞろぞろと出てきていた。


大学の授業なんて出なくても、誰かに出席に丸をしてもらって、誰かに配布物を貰って、レポートさえクリアすれば単位くらい取れる。

だけどなんで俺が毎日クソ真面目に大学に来てるか分かるか?


「げっ、オ、オウくん」


お前に、会いたいからだよ。


扉から出てくる学生の中から、透子の姿を見つける。何百人生徒がいたって、お前を見つけられる自信がある。白い肌に、ほんのり赤い丸みを帯びた頬。

好きだ。食べたい。食べたいくらいかわいい。食べられたら、こいつは俺の中で、一生暮らしてくれるのかな。


「え、どうして社学に?…あー、でもえっと、私、この後用があるので!って、あ、別に私に用じゃないっか。…うん、それじゃあ、さよなら!」


俺を避けるように目を泳がせ、くるりと踵を返す。ひらりと揺れるくるぶし丈のロングスカートを見て、胸が締め付けられる。


「……透子」