にべないオウジ



退院後、あれだけ囃し立てていた周りは一気に引いて、逆に腫れ物に触るような目で、全員が俺を見てくる。

正門に入ってすぐ、掲げられた横断幕はなくなっていて、まぁこんなもんかと思った。


周りの目が鬱陶しいから、俺はいつも通り振る舞う。「怪我大丈夫?」と声をかけられれば、いつも通りなんてことない顔で「病院食が不味かった」と答え、「弓道残念だね」と言われれば「これでやっと受験勉強できる」と小さく笑う。


そうすると次第に周りも俺に対する接し方が戻ってきて、一週間も経てば事故のことに触れられることはなくなった。

俺が弓道をしていたことも、みんな忘れてしまったのかと思うくらい、誰も話題に出さなかった。



授業が終わって、部活をせず帰ると、暇すぎて頭がおかしくなりそうだった。

何をすればいいか分からなくて、家にいてもベッドに寝転んで天井を見上げることしか出来ないので、放課後は極力教室に残っている。

その方が勉強も出来るし、分からないことがあれば聞きに行けるし、好都合だった。


ガラッと教室の扉が開き、誰が入ってきたか確認するのも面倒で、俺は手元の参考書から視線を動かさない。


いつもなら相手が教室を出ていくまで姿を見ようとは思わないのに、どうしてか、俺は何かに誘われるように顔を上げた。

目が合って、相手の肩がビクリと揺れる。何故か傷付いたように潤む瞳で、俺を見ている。


「……何か用?」


もう、俺の事をそんな目で見てくるやつは居ないんだよ。イライラする。お前だけは、俺の事を忘れていないのだと示されているようで、ひどく腹が立つ。