にべないオウジ



目が覚めた時には真っ白な天井と、点滴の音と、消毒液の匂い。すぐに病院だと分かり、母親が憔悴しきった顔で俺を見下ろしている。

父はそこには居なかった。

その時俺は、まだ覚束ない意識の中で思った。


ああ、失望されたと。



結果的に事故の後遺症で右手に麻痺が残り、それはリハビリですぐに治ったけれど、弓道を続けることは出来ないと言われた。

続けたとしても、過剰なまでの精神力を試されるあの場で、きっと心が持たないだろうと言われた。


へえ、そうなんだ。俺もう、弓出来ないんだ。

まぁ、別にいいか。元から俺も好きでやってたわけじゃないし。物心着いた時から弓を持たされて、外に遊びに行きたいのに家の中で教え込まれて、なんでこんなことしなきゃいけないんだって思ってた。

弓が出来なくなったら、俺は自由だ。両親からの重すぎる期待を背負うこともない。好きな時に家に帰って、好きな時に外に出かけられる。周りから異常なまでに囃し立てられることもない。


いいことしかないじゃないか。

ホッとした。ホッとしていいんだ、俺。



その大会のために大学受験の勉強をせず、24時間それだけのためだけに過ごし、寝て、また始まる。

それが突然自分の手元からなくなると、どう過ごせばいいのか分からなくなった。


母は泣いた。泣いて、俺を責めた。何度も叩かれた。痛くないけど、腕を叩かれる度、痛かった。どこが痛いんだろう。分からなかった。

父はもう俺に構わなくなった。前までは、右手が3ミリ下がってるとか、足をもっと開けとか、開けすぎとか、集中しろとか、あんなにも口うるさく言ってきたのに。

弓がなくなった俺に残ったものは、孤独しかなかった。