にべないオウジ



父は昔、弓道で名を馳せる人だったという。

だから自分で道場を持ったし、その子供に生まれると必然的にそれを習わされた。弟は弓が好きなわけではないみたいだけど、俺は「さすが俺の子だ」って喜んでくれるのが嬉しくて、小さい頃から続けているように思う。

勉強が出来ても、運動会の徒競走で一位を取っても、両親は褒めてくれなかったから。

だから弓を頑張らないと家では笑いかけてくれなかったし、話を聞いてもらえなかった。


俺は学校の名声のために弓道をしているわけでも、部員のためでも、自分のためでもない。両親に認められたい、ただそれだけの理由だった。

それだけの理由なのに、天才だとか流石だとか王子様だとかクソみたいな言葉を投げてくる周りに、心底うんざりしていた。



だけど、あの女は、純粋で澄み切った声で俺を「かっこいい」と言う。ろくに弓を引く姿を見ていないやつが言うものではなくて、俺はあいつが毎日練習を見に来ているのを知っている。

弓を続けるモチベーションなんてガキみたいな理由で、全然かっこいいものではないのに、俺はあいつの放ったそのシンプルな言葉が頭から離れない。


大会まであと一週間。

親の期待も高まり、練習時間が伸びていく中のことだった。







ある日の部活帰り。

酒気帯び運転の車が突然ふらふらと俺の前に現れ、連日の練習疲れもあり、上手く避けることが出来なかった。

ドンッと車に打ち付けられ、最後に見た景色は肩に掛けていた弓が空を舞い、地面に打ち付けられて、ボキッと折れるところだった。