「オ、オウくんっ」
足を止めて、後ろを振り返る。
夏を迎えてもシャツから伸びる肌は真っ白で、力を込めたらすぐ折れてしまうんじゃないかと思うくらい華奢で、目は、きっとしばらく見つめていると吸い込まれそうになる。だから、あまり目を合わせたくない。
「あ、あの、無理しないでね」
「は?何それ」
「だって、家でも夜遅くまで練習してるみたいだし。大会近いから仕方ないかもしれないけど、し、心配だよ」
「なんで知ってるんだよ。ストーカーかよ。暇人だな」
周りは俺を必要以上に囃し立てる。
放っておいてくれたらいいのに。
俺は一人静かに弓を打ちたいだけなのに。
両親の期待に応えるために、やれればそれでいいのに。
あんな横断幕とか、クラスメイトからの応援の言葉とか、うんざりだ。消えろって思う。
「だってオウくんの弓引いてる姿見てる時間が、一番好きなんだもん」
風が吹いて、絹のような柔らかそうな髪が揺れる。髪を耳にかけて、その手が降りて行く様子を、俺はぼうっと眺めていた。
「かっこいいよね、オウくんは」
何故か少し悲しそうに笑うこの女に苛立って、俺は無視して家の中に入った。透子のくせに、たまにひどく色気のある顔をする。
それがすごく、気に入らない。

