もしも、過去に戻れるのなら、俺は小学生のガキの俺に「出席番号が前の女は痩せると細くて小さくて見ているだけでハラハラするから、ブタ女とか言っていじめんな」って言うし、中学生の生意気な俺に「努力家だから知恵熱出すくらい必死に勉強するから、ちゃんと勉強教えてやれ」って言うし、高校生のバカな俺に「もうすぐこの女はお前にとってかけがえのないものになるから、適当な彼女を作るのはすぐにやめて、後悔する前に素直にあいつと話して、バレンタインのチョコも受け取れ」って言ってやりたい。


だけど過去に戻るなんて今の科学では不可能で、俺は自分の行動を悔い改め、未来を変えるしか出来ない。

行動を、悔い、改め…。




「桜司、顔。人殺しの顔してるよ」


後ろからキリが声をかけてくる。今日、透子とキリは二人で昼食を食べる日だ。

俺は自慢じゃないけど透子の時間割り、何曜日にキリと昼食を食べるか、空き時間はいつあるか、全て把握している。自慢じゃないけど。


そして何故かキリも「げ」と顔を歪めた。

その視線の先は、透子と、Tシャツクソダサ陰キャ男。その様子に何故こいつが顔を歪めるのかは分からないけど、そんなことどうでもいいので何も聞かない。


透子と陰キャ男が何やらコソコソ話している姿を、眺める。なんとなくキリと一緒に傍まで行くと、やっぱり透子は俺を見て微妙な顔をした。


「オ、オウくん…」


まるで俺がそこに居ちゃいけないみたいな顔で、目を逸らしやがる。そのことにひどく腹が立って、歯をギリリと滑らせた。