「ちぇ、失敗」
手のひらにキスをした遊馬くんは、不服そうに唇を尖らせて私から離れた。びっくりした。すぐ手を挟めて良かった。自分の危機管理能力に感謝する。
「な、なんで男の人ってすぐにそういうことするの!?」
「透子ちゃんだって桜司にしたくせに」
「あ、あれは…!」
あれは、オウくんの寝顔を見てるとたまらない気持ちになって、触りたくなったから。
だけど今遊馬くんが私にする理由なんて、何もない。
「男はね、三大欲求の性欲が一番強いの」
「……言い訳になってない」
「ははっ、怒らないでよー」
笑うと傷が痛むのだろうか。少し顔を歪めて、だけどすぐになんてことないように笑い直す。
「一瞬でもいいから、俺の事で頭がいっぱいになればいいのにって思うからだよ」
そう言って、街灯の光に照らされる遊馬くんの顔が印象的で、私はしばらくその表情が頭から離れなかった。
「もしもし、栞さん?うん。今から会える?いいよ、ホテルで。うん。いや、用ってわけじゃないけどさ。虚しくて、死にそうなの」

