やっと落ち着いたのか、落ち着いてはいないけどなんとか平然を取り戻したのか、桜司はいつも通りすんとした顔で俺の隣を歩いている。
この顔の隣で歩きたい女は五万といるし、桜司もそれを自覚している。
こいつは来る者拒まずだ。だから付け上がる女が多いけど、その女たちの顔をちゃんと見た事はない。
残酷なやつだよ。女の子みんなに「こいつはやめとけ〜」って言いたいけど、多分その時にはもう俺の声なんて届かない。
売れないバンドマンに惚れたり、ろくでもないパチンカスに貢いだり。
そういう危うい男って、女の子は好きじゃん。
「……なぁ、遊馬」
昼休み、食堂へ向かう道中、桜司が俺の苗字を呼ぶので「なあに?」と隣を向く。
え、何。めっちゃキレてんじゃん。
「なにあれ」
くい、と顎を動かす先を恐る恐る見た。
そこには、こいつの想い人と、弓道部のTシャツ男が何やら仲良さげに笑い合っている。付き合ってるのか?と誤解されてもおかしくない。
いつもの友達を待っているのだろうか、透子ちゃんは食堂の席に座りながらTシャツ男を見上げていて、男も隣に座るつもりはないらしい。

