小さい、腹の底から出すような黒い声が聞こえて、無表情のままの遊馬くんが無理矢理私と男の腕を剥がした。
いつも明るくてにこにこしている遊馬くんからは想像もできない冷たい表情に、背筋が凍る。
あまりに力強く引き剥がしたせいか、男は痛そうに顔を歪めて舌打ちをした。そうして乱暴に遊馬くんの胸倉を掴んで、その左頬を拳で殴りつける。
信じられなくて、その場から動くことができなかった。
「かはっ」と苦しそうに息を漏らして、体勢を崩す遊馬くんに、男はもう一発、まだ一発、遊馬くんを殴って、最後にお腹を蹴った。
抗おうともしない、ただ男に殴られるだけの遊馬くんの顔には血が滲んでいて、私はその場で震えることしか出来ない。
「や、やめて…もう、やめてください!」
そんなことしたら、遊馬くん、死んじゃう。
「……透子ちゃん、今のうちに、早く電車乗って」
「そ、そんなこと、出来るわけない!」
怖い。怖いけど、遊馬くんを置いて逃げるなんて出来ない。どうしよう、どうしようと無能な頭を回していると、男たちは飽きたのか何事もなかったように遊馬くんを離した。
離した、というよりも放り投げた方が近い。慌てて遊馬くんに近寄って、その前に立つ。
「遊馬、また遊ぼうぜ」
この人たち、頭おかしい。その三人が夜の景色に消えていくまで、私は背中を睨み付けて、消えたあと、ホッとして泣きそうになった。

