オウくんって、こんなに肌綺麗だったっけ。こんなに澄んだ瞳だったっけ。こんなに、キラキラ眩しかったっけ。
あの形のいい唇に触れてしまったことが、とても悪いことをしてしまったようで罪悪感が襲う。
この前まではこんなこと思わなかったのに。オウくんに、欲、なんてなかった。周りの女の子をいいなぁって思うことはあったけど、あそこに入りたいとは思わなかった。
ただ一つ。オウくんに触れていた時間は、震えたし、怖かったけど、すごく心が満たされた。
「……私、別の席移るっ」
この授業にキリちゃんはいない。
いつも一人で受けているため、私一人がどこの席に行こうと、誰にも迷惑はかからない。
目の前に広がっていた筆記用具を筆箱に入れて、先週配られた資料をぐちゃぐちゃにまとめて、鞄を持って立つ。
オウくんに背中を向けて去ろうとした時、「とこ」と小さく私の名前を呼んだ。
やっぱりそれだけで、私の心は満たされた。
一刻も早く離れようと思っていた足が、つんのめる。私がこの人に呼ばれて、無視できるわけがない。それをこの人は、知ってる。
振り向きたい。だけど振り向いても、うまく話せない。あの時私が寝込みを襲ったなんて知られたら、絶対嫌われる。嫌だ…。
ゆっくりと振り返ろうとした時、先生が入ってきた。私はその機に足を進め、オウくんから離れることに成功した。
だって、私もう、オウくんのこと下心なしでは見れない。

