にべないオウジ



ひく、口の端が僅かに動く。


「遊馬くんって、性格悪いのか良いのか、ほんとに分からない」

「え、言わないであげるって言ってるんだから、良いに決まってるくない?」

「良い人はそんな交換条件出してきたりしないよ」

「そうかな?だって羨ましいじゃん」


何が羨ましいのか、そう言って遊馬くんは席を立った。オウくんが講義室に入ってきたみたいだ。彼が入ってくると、いつも周囲がざわっとするからすぐに分かる。


「……で、何を聞けばいいの?」

「お、聞き分けいいね。また連絡するよ。おーい桜司ー、こっちー」


ひらひらと、後ろの扉から入ってくるオウくんに手を振る。私はその姿を見てしまうと、絶対恥ずかしくって変になりそうだから、見ないように見ないように必死に俯く。

遊馬くんの言葉なんて無視して、いつも通り後ろに座ってくれたらいいのに。

オウくんは面倒くさそうに前の方まで来て、私の座る席の横に立った。そのせいで、前に座る人たちが少し騒ぎ出す。


一一一工藤桜司だ。あれが工藤桜司?初めて近くで見た。色気半端なくない?美しー。あの女の子、誰?


「なんで、遊馬とこいつが一緒にいんの?」

「ん?この前の鍋美味しかったなって話してただけ。今日は透子ちゃんの近く座る?」


恐る恐る顔を上げると、退屈そうなオウくんが私を見下ろしていて、目が合う。咄嗟に逸らすと、舌打ちが聞こえた。