「透子ちゃん、人の家であんなことするなんてさ。意外と大胆なんだね」
そう言いながら、遊馬くんは空いている私の前の席に腰掛けた。私の机に両肘をついて、手のひらの上に顎を乗せる。
固まって、彼を凝視すると、ますます楽しそうに笑う。
「まさかと思って、三度見したよー。透子ちゃんが、桜司に、キ」
「わああああああ!!」
見られた。見られてた?うそ。物音一つしなかったはずなのに。いや、そんなこと気にしてる余裕すらなかったかもしれない。
慌てて遊馬くんの口を手で塞ぐと、ちょっと不機嫌そうに眉を寄せて、私の手を剥いだ。
心臓がバクバクと分かりやすく音を立てる。最悪だ。なんてことだ。あんな恥ずかしいところ、誰かに見られるなんて。終わった。恥ずかしくて死にそう。
「やっと、桜司に欲が出てきたんだ?」
「欲…?」
「そ。自分のものにしたいっていう、欲」
自分のものに、したい。私が?オウくんを?みんなのオウくんを?
「だけど桜司はさ、寝ぼけてたんだろうねぇ。覚えててもきっと夢だと思ってるよ。桜司が知ったらさ、なんて言うかな?」
ぞわり。背筋が伸びる。想像して、首を振った。「お願い。オウくんには言わないで…」と縋るように遊馬くんを見ると、彼は思っていたよりも優しく微笑んで私を見ていた。
「うん。勿論言わないよ。透子ちゃんが俺の言うことなんでも聞いてくれるって言うなら」

