有り得ない。やっぱりこの男、有り得ない…!体は火照ってるし、息も荒い。あそこからは希のせいで液が垂れてるし、かぶされたのは毛布だけ。そんなもので隠れるほど私は小さくないし、そもそも平然と来客を部屋に入れるところが頭おかしい…!
「先生、卒論のテーマについて相談いいですか?」
しかもそれは聞き慣れた声。のんびりしていて、あまり抑揚がない。
透子並にピュアな、仁見さんだ。ゼミの教授、希だったんだ。…最悪。知り合いっていうところがまた、最悪。
「ああ、いいよ。何分くらい?」
「んーと、20分くらいです」
「そ。座って」
いや、何悠長に座らしてんのよ。私の存在もう忘れた?バレたらどうしてくれるの?私絶対死にたくなるよ。それでも希はいいわけ?
仁見さんの足音がこちらに向かってくる。心もとない毛布を体に覆って、必死に包まる。息をしたらバレそうで、私は口を手で覆うことしか出来なかった。
希が足りないのに。早く触ってほしいのに。最低。この男のことを何百回最低だって思ったか、もう数えきれない。
私が死にたいって言っても、きっとこの人は、「死ぬなら俺の見えないところにしてね」って言う。
だけど私は希から、抜けられない。
「ぁっ……」
しまった。声が漏れた。「誰かいるんですか?」と仁見さんの純粋な声。「さあ?」としらばっくれる希の最低な声。

