にべないオウジ



ベージュ色のノースリーブのトップスに、脚のラインが強調される濃いめの色のスキニー。高いヒールのサンダルを履いて、スマホしか入らないような小さいショルダーバッグを下げている。


ーーーーー透子のお姉さんだ。

自分が中学の時以来会っていなかったけど、すぐに分かった。美人で、いつも周りに友達で溢れているようなイメージだったこの人は、歳を重ねる事に色気を増して、だけど無邪気さもどこかに残している。

思わず唾を飲み込んでしまった。なんか、男にモテそう。昔からそうだったけど。


桜司が案外すぐに透子を離して、吸い寄せられるように、ふらりとお姉さんの方に、一歩、足を進める。


「……依子さん」

「桜司、ひっさしぶり。また背ぇ伸びたんじゃない?ヒール履いても追い抜かされちゃう。やっぱ男の子だね」


桜司の前に立って自分と背比べをする依子さんが、無邪気に笑った。ほっそいヒールで立つ女に「やっぱ男の子だね」なんて言って、可愛く笑われたら、男はどう思うんだろう。

私はこの人がちょっと苦手。多分計算とかわざとじゃなくて、自然とそういうことができるから。

厄介な人だなあと思ってしまう。


依子さんは私のことも覚えてくれていたようで「キリちゃん!」と、また花が開くように笑った。

私は、それに対して「お久しぶりです」と苦笑いすることしか出来なかった。


これが桜司が脱童貞した相手?きっついなぁー。

そっと透子の方を見る。依子さんと顔を合わせるのが気まずいのか、ずっと俯いたままだ。