透子の様子が明らかにおかしい。

そう気付いたのは、頭がガンガンして最悪の目覚めを迎え、気分は最底辺の中遊馬くんの家から自分たちの家に帰っている途中だった。

私たちは地元が一緒なので同じ電車に乗って、同じ道を歩く。

本当は私の家のマンションが先に着いて、透子と桜司はもっと坂の上にある一等地に住んでるんだけど、今日は透子の人生初の朝帰りなので私も一緒に着いていくことにする。


今朝、透子のお姉ちゃんから連絡が入っていたみたいだ。

私の家に泊まってることになってる、って。まぁ嘘でもつかなきゃ捜索願とか出しかねないし、ナイス判断だったと思う。



透子の話に戻ろう。

そう。透子は、帰り道一度も、桜司と目を合わそうとしない。

私を挟んで、ずーっと桜司と距離を取りながら歩いている。ふと何かの関係で並び順が変わって、透子が真ん中になった時なんて物凄い速さで桜司と距離を取っていた。


昨日お酒を飲むまでは普通だったのに。

この二人に何があった?いや、桜司はいつも通りだから、透子に何かあったに違いない。


珍しく、少し小走りで私たちの前を歩く透子。いつもは歩くのが遅いくせに。若干息上がってるし。何事?


「桜司、あんた透子に何したの?」

「は?何もしてねーよ」


桜司は分かりやすく不機嫌そうに眉を顰めて私を睨み付けた。俺が一番知りたい。まるでそう言っているようだった。