オウくん、なんでキスし返したの?

相手が私だって気付いてた?

気付いてたら、きっとそんなことしないよね。

こんな、ドラマで見るような恋人にするようなキス。

相手の頭の中を自分でいっぱいにするようなキス。

私だって思ったら、してくれないよね。


夢みたいで、泣きそうになって、ちょっとだけ泣いた。アイボリー色のカーペットに、一滴だけ染みがついた。



最後に、私の下唇を甘噛みして、オウくんは離れていく。

さっきまで乾燥していた唇が、湿っていることに気が付いて、とんでもない気持ちになった。


私、なんてことをしてしまったんだろう。

こんな、よそ様の家で、遊馬くんもキリちゃんも寝ているのに、なんてことをしてしまったんだろう。

何事もなかったかのように、また眠りにつくオウくんを見てから、咄嗟に反対に寝返りを打つ。


心臓が今まで経験したことないくらい激しく鼓動していて、このまま死んじゃうんじゃないかって思った。

きっとオウくんも寝ぼけてたんだ。だから、どうか、起きても思い出さないで。



どうしよう、私。

もうオウくんの顔、見れない。