「中3。別に普通だろ」
なんて、本当に何気なく、本当にそれが世間一般の普通で何も驚くことはないのだというように、彼は面倒くさそうに言い放って、また私の作ったつくねを口に含んだ。
「へえ、意外と普通なんだ。相手は?彼女?先輩?その辺の人?家庭教師の先生?」
「彼女では、なかった。先輩?」
「なんで俺に聞くんだよ」
「いやなんかあの人って先輩って感じしないから」
オウくんもお酒を飲んでいるから、こんなに話すのだろうか。いつもだったら絶対に話さない。私がいないところではこういう話も普通にしているんだろうか。
「あの人」って呼ぶ相手の人を想像して、胸が裂けそうになる。オウくんにこんな懐かしそうな顔をさせている「あの人」に、たまらなくむかむかする。
好物のきのこを大量に口の中に入れても、味がしない。
「でもそれまでも彼女いたろ?童貞卒業は中3なんだ」
「…まぁどれも長く続かなかったし、その人のことは昔から知ってたから、流れで」
「あ、分かった。桜司の初恋の相手だ。こんな桜司にもそんな可愛い時があったなんて…!」
「うっさい黙れよ」
否定、しないんだ。
もうこれ以上この話を聞くのが嫌で、逃げ出したくて、たまらなくなる。前までは、オウくんに彼女が出来ても「羨ましいなぁ」くらいにしか思わなかったのに。
オウくんの近くに置かれたハイボールを奪い取って、力任せに缶を開けて、グッグッグッと勢いよくお酒を喉に通した。

