私が鍋の具材を取るタイミングを逃したのが分かったのか、オウくんが黙って私の器を取り、問答無用で具材を入れてくれる。たまたまなのか、そうじゃないのか分からないけど、きのこが多め。
この人に庶民的なお玉と缶ビールは似合わなすぎて、それこそ笑っちゃう。
オウくんのよそってくれた器の中の具材が、とってもとっても美味しそうに見えて、やっぱり私はしばらく食べ出せなかった。
「オウくん」
缶ビールを口につけたまま、彼が視線だけをこちらに向ける。
遊馬くんはキリちゃんと何やら言い合いをしていて、キリちゃんは肉を取るので必死だ。
「楽しいね」
楽しい。こんな気持ち初めて。みんなでわいわい鍋を囲んで、その中にオウくんもいる。暑いからって冷房をガンガンにして、寒いなぁと思っていたらオウくんの方からブランケットが飛んでくる。
投げなくてもいいのに。そう思うけど私が「ありがとう」って言うと、オウくんはほんのちょっとだけ口を緩めた。
オウくんが変だ。
変だから、なんか私、オウくんにドキドキばっかりしてる。こんなこと、今までなかった。だってオウくんは遠くて、私なんて視界に入れてくれなくて、神様みたいで、見ているだけで満足。
見ているだけで満足だったのに。
「恋バナしよー。はいじゃあ桜司から。初体験はいつ?」
「死ね」
遊馬くんはお酒が回ってきたらしい。いつも以上にヘラヘラ笑って、顔もちょっとだけ赤い。

